高山市図書館

Japanese Map symbol (Library) w.svg 高山市図書館
Takayama City Library
Takayama City Library ac.jpg
高山市図書館「煥章館」(2016年10月)
施設情報
正式名称 高山市図書館
前身 戦捷記念高山図書館
大野郡教育会施設図書館
高山町図書館
専門分野 総合
事業主体 高山市
管理運営 株式会社図書館流通センター
建物設計 脇本・三計・小林特定設計・監理企業体[1]
延床面積 3,358[2] m2
開館 1906年(明治39年)2月
所在地 506-0838
岐阜県高山市馬場町二丁目115番地
位置 北緯36度8分36.5秒 東経137度15分44.4秒 / 北緯36.143472度 東経137.262333度 / 36.143472; 137.262333座標: 北緯36度8分36.5秒 東経137度15分44.4秒 / 北緯36.143472度 東経137.262333度 / 36.143472; 137.262333
ISIL JP-1001757
統計・組織情報
蔵書数 197,335冊(2014年度[4]時点)
貸出数 438,930冊(2014年度[4]
年運営費 91,730千円*(2015年度予算[2]
条例 高山市図書館の設置及び管理に関する条例(平成15年12月19日高山市条例第17号)
館長 打保秀一(2016年7月現在[3]
職員数 33人(2015年現在[2]
公式サイト www.library.takayama.gifu.jp/
備考 統計数値に分館の値は含まない。
(ただし*は分館を含む。)
プロジェクト:GLAM - プロジェクト:図書館
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高山市図書館(たかやましとしょかん)は、岐阜県高山市馬場町二丁目にある公立図書館。本館は高山市近代文学館および高山市生涯学習ホールとの複合施設である高山市図書館「煥章館」(たかやましとしょかん「かんしょうかん」)[注 1]内にあり、9つの分館を設置して日本一面積の広い高山市で図書館業務を行っている[3]

煥章館にある本館と分館の一部は図書館流通センター指定管理者として運営する[5]2004年(平成16年)の煥章館への移転以降、高い利用水準と利用者満足度を維持しており[3]古典を講読する「煥章館セミナー」を開催するなどして市民の読書と生涯学習を推進している[6]

歴史

教育会運営期(1906-1943)

高山市図書館の歴史は、1906年(明治39年)2月に開館した戦捷記念高山図書館までさかのぼる[7]。高山の町は金森長近が整備した高山城とその城下町を基礎とし、その後の幕府直轄領時代に京都江戸の気風を反映した文化が栄えたところであり、人々の熱い思いを受けての開館となった[8]

1900年(明治33年)に大野郡高山町教育者ら有志12人が東宮殿下御成婚記念事業として通俗図書館を設立する件を建議し、同年5月3日に高山町会は図書館の建設に対して補助を行うことを議決した[9]1905年(明治38年)11月2日には大野郡中部教育会が図書館創立委員8人を任命し[9]、高山町へ諮問を行うなどの運動を展開した[7]。同月、高山女子尋常小学校に図書館を置くことが決定している[10]。こうして大野郡中部教育会の運営する私立図書館として1906年(明治39年)2月に戦捷記念高山図書館が開館した[7]。大野郡中部教育会は書籍の購入費が十分でなく、設立趣意書を配布し、住民有志に賛助を求めた[11]

1908年(明治41年)7月、運営者の大野郡中部教育会は高山町教育会に改称した[11]1909年(明治42年)、高山町教育会は予算規模拡大が決まり、毎年図書購入費として約140円を支出することになった[11]1912年(大正元年)には荏野文庫1,400冊を購入、蔵書は倍以上の2,291冊に増加した[12]。翌1913年(大正2年)9月20日、大野郡教育会施設図書館が創立され、戦捷記念高山図書館の蔵書や設備一式を大野郡教育会施設図書館に移した[注 2]1914年(大正3年)11月30日御大典記念として大野郡公会堂が城山三の丸に建設され、図書館はその1階に移った[13]。この時の大野郡公会堂は「仮開館」という形であり、1915年(大正4年)4月23日に落成式を挙行している[12]

1916年(大正5年)4月17日より、夜間開館を開始する[14]1923年(大正12年)4月に郡制が廃止されたことに伴い、高山町図書館に改称し[注 3]、高山町教育会の運営に戻った[注 4]1929年(昭和4年)、高山町教育会は荏野文庫の整理・分類を行い、目録を作成した[17]。翌1930年(昭和5年)2月11日には成績優良として文部省から選奨された[18]。同年9月22日には蔵書目録を作成し、約800冊を頒布した[18]

1931年(昭和6年)4月10日、高山町に本籍を置く東京府牛込区在住の塚越正之助から332冊の図書の寄贈を受け、「塚越文庫」が設立された[18]。同年の開館日数は前年比6日増の289日、閲覧人数は前年比5,993人増の10,762人であった[18]。その後、高山町は大名田町と合併して市制施行し高山市となったことで、高山市図書館に改称する[注 5]

高山市直営期(1943-2004)

1943年(昭和18年)4月1日、高山市図書館が教育会から高山市へ移管され、市では新たに館則を制定し、職員を任命した[注 6]。当時の蔵書数は5,539冊である[16]。岐阜県で第二次世界大戦以前に設立された市町村立図書館は高山市図書館以外には岐阜市立図書館大垣市立図書館羽島市立図書館、蛭川村立済美図書館(現・中津川市立蛭川済美図書館)の4館しかなく、飛騨地方では唯一であった[13]。当時の図書館の活動として特筆すべきは、1944年(昭和19年)8月に始まった婦人読書会である[7]。婦人読書会は月に1回、図書館が会費を徴収して会員に1冊回し読みさせるというもので、戦中という厳しい情勢でも市民の教育熱・文化熱の熱さを窺うことができる[7]

戦後間もない1949年(昭和24年)、読書サークル「紙魚の会」が発足し、名作を読む月例読書会の開催、年報の発行、文学散歩の企画などの活動を2008年(平成20年)まで継続し、図書館活動を支えることになる[19]1951年(昭和26年)度の蔵書数は7,663冊で年間290日開館し、34,133人が閲覧に訪れ、156,675冊が閲覧に供された[20]。当時、高山市教育委員会が管轄していた社会教育施設は図書館と公民館だけであった[20]。なお戦前から戦後間もない頃、古瀬文庫や角竹飛騨史料文庫など研究者向けに資料を公開する個人文庫が高山市内に点在していた[21]

1959年(昭和34年)9月1日に、火曜日金曜日に19時から21時まで図書館を開く夜間開館を開始[22]1962年(昭和37年)9月には姉妹都市アメリカ合衆国デンバーから贈られたインディアンの女性民族衣装、カウボーイハット、現地の風景写真などを展示するデンバー室を設置し、市民に公開した[23]1969年(昭和39年)8月7日、高山市民会館北側の別棟に移転し、1階を書庫、2階を閲覧室として供用開始した[24]

1976年(昭和51年)10月31日、市制40周年記念事業の一環で進められていた新図書館の整備が完成、11月3日文化の日から一般利用を開始した[25]。図書館の建物は民間企業の社屋を改修したもので[26]、鉄筋3階建て延床面積1,100m2で工費は4000万円だった[25]。古い街並みの残る上二之町に立地したことから周囲になじむよう外壁の塗装は茶色系で統一し、前庭の植栽や自然石の配置により落ち着いた雰囲気作りが行われた[25]。高山市の図書館整備に呼応して、高山市文化協会は「1冊の本寄贈運動」を同年10月に展開し、中でも北村兵四郎は4,000冊の寄贈を行った[25]。また武田貞之は同年9月に自身の1973年(昭和48年)の日本美術展覧会入選版画『いらか』を寄贈した[27]。新館は約21,000冊をもって出発し、1階に児童閲覧室・視聴覚室・書庫、2階に中高生閲覧室・書架・事務室、3階に一般閲覧室を設けていた[25]。また市制40周年記念協賛事業として11月3日から11月7日まで名誉市民瀧井孝作展を開催し、瀧井の手書き原稿、色紙、著書など約80点を展示した[28]。旧図書館は高山市民会館の一部となり、大小のホールとして利用されることになった[29]

1996年(平成8年)、高山市図書館は『源氏物語』と漢詩を読む講座を開設した[26]。この講座からは『源氏物語』を講読するサークルが3つ生まれ、別の古典を扱った講座が派生するなど後の図書館活動に大きな影響を与えた[26]。煥章館への移転前の職員数は7人で、そのうち正規職員は4人であった[30]

煥章館期(2004-)

旧図書館は元来、図書館に利用されることを想定した構造になっていなかったため間取りが悪く、延床面積が狭いため増え続ける蔵書に対応するのが難しく、コンピュータシステムの高度化にも限界があった[26]。そこで高山市生涯学習推進協議会は先進地の視察や住民アンケート、複数の協議を通して『生涯学習基本構想』を策定、1990年(平成2年)に新図書館建設を高山市に提言した[26]。ちょうど1996年(平成8年)に高山市役所が移転して中心市街地未利用地が出現したこともあり、翌1997年(平成9年)に市役所跡地を学習ゾーンとして整備することを議決した[31]2000年(平成12年)の『高山市生涯学習基本計画』、2002年(平成14年)の『図書館を中核とした生涯学習施設基本構想』策定を経て同年10月に設計プロポーザルの実施、12月の着工と進み、2004年(平成16年)1月に高山市図書館「煥章館」が完成した[32]。総工費は15億5千万円であった[33]。そして約300m離れた旧館から新館へ図書を移す作業が同年2月6日までに行われ、市民ボランティアも作業を手伝った[34]

2004年(平成16年)4月に新館での業務を開始した[35]。高山市側の職員は館長を含む2人だけ[注 7]で施設管理や購入図書の決定、サークル指導などの管理系業務を担当し、カウンター対応や図書館だよりの発行など直接利用者と関わる業務は図書館流通センターに委託された[36]。図書館流通センター側のスタッフは12人であった[5]。同年12月までの実績は、入館者数が2.3倍に、貸出冊数が2.5倍になった[30]2006年(平成18年)4月より指定管理者制度を導入して図書館流通センターを指定管理者とした[35]。この時の職員数は館長を含め28人であった[37]

2008年(平成20年)1月30日中部日本スキー大会に出席した常陸宮正仁親王親王妃華子夫妻が煥章館へ視察に訪れ、近代文学館も併せて見学された[38]。同年7月からは、日本で初めて住民基本台帳カードによる図書の貸し出しを開始した[39]2013年(平成25年)4月23日、小中学校の学校図書館との連携や教育委員会との連携、図書館での読書推進活動が評価され、「平成25年度子どもの読書活動優秀実践校・図書館・団体」として文部科学大臣表彰を受けた[40]2016年(平成28年)8月20日には恐竜研究者の真鍋真を招いて講演会を開催、これに合わせて7月よりトリケラトプスなど3体の恐竜骨格模型を館内で展示した[41]

煥章館

煥章館は高山市図書館を中核とした複合施設で、ほかに高山市近代文学館や高山市生涯学習ホールも設置されている[3]。煥章館の名は、建物が立地している場所が学制発布時に創立した煥章学校(現・高山市立東小学校[42])の所在地であったことに由来する[31]。煥章学校は瀧井孝作の祖父である大工の瀧井與六が建築した飛騨地方初の近代学校であった[43]。「煥章」の語は『論語 泰伯』の一節「乎として其れ文に有り」を典拠とし、中国神話上の君主・(ぎょう)の時代の活発な文物の探求を意味し、単に煥章学校の名を受け継いだだけでなく、煥章館が高山市の生涯学習・文化振興の核となるようにという高山市当局の願いを含んだものである[31]

煥章館は鉄筋コンクリート構造2階建て、延床面積3,836m2[44]、煥章学校を模した[注 8]フランス風の建築物である[30][43]設計は脇本・三計・小林特定設計・監理企業体[1][45]施工は飛騨・古橋・二反田特定建設工事共同企業体[1]。当時の写真を基に[30][43]、外観はほぼ完全に再現された[30]。屋根瓦の煉瓦色、漆喰(しっくい)の、柱とベランダの淡緑色(鶯色[33])が調和した外観[注 9][43][47]、内観は木材を多用した暖かな雰囲気の構造となっている[47]。2007年(平成19年)に日本漆喰協会第2回作品賞を受賞した[1]。書架の間に設置された木製のソファは地元家具メーカーからの寄付品である[48]

1階に「木のくにこども図書館」と名付けられた児童閲覧室(532m2[31]と生涯学習ホール(204m2、108人収容[49][33]、2階に一般閲覧室(1,008m2[31]と近代文学館を設置する[33]。館内は全面禁煙で、バリアフリー対応である[33]

高山市近代文学館

高山市近代文学館(たかやましきんだいぶんがくかん)は高山市図書館「煥章館」2階にある文学館[33]。「文学を通して高山の文化を将来に伝え、発展させること」を目的に設置され[50]、 『俳人仲間』の瀧井孝作、『山の民』の江馬修、『春の夢』の福田夕咲、『キューポラのある街』の早船ちよら高山市を代表する近代文学作家と市民の文学活動に関する展示をしている[51]。館内は展示コーナーと関連図書閲覧コーナーで構成され[51]、年2回企画展を開催する[52]。入場料は無料で、開館時間・休館日は図書館と同じである[51]

分館

旧・高山市域以外の9地域に分館を設置している[3]。高山市は2005年(平成17年)2月に1市2町7村が合併して発足したが、旧・高山市域を除くと旧・丹生川村にしか図書館がなく[53][注 10]、「図書館とはこのようなサービスを提供する場である」という段階からの出発であった[3]。当初は分館で行事を開催してもあまり参加者が集まらず、おはなし会を開くボランティアの育成や、地域課題に取り組む講座を開講して成果を1冊の本にまとまるなどの事業を実施することで分館利用の促進を図っている[3]

丹生川分館

丹生川分館(にゅうかわぶんかん)は高山市丹生川町坊方2000番地の丹生川支所3階に設置されている[54]。分館の面積は320m2[2]ISILはJP-1001758[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は20,914冊、貸出冊数は9,538冊[4]

清見分館

清見分館(きよみぶんかん)は高山市清見町三日町305番地のきよみ館内に設置されている[54]。分館の面積は138m2[2]、ISILはJP-1001759[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は10,927冊、貸出冊数は11,197冊[4]

荘川分館

荘川分館(しょうかわぶんかん)は高山市荘川町新渕430番地1の荘川総合センター内に設置されている[54]。分館の面積は123m2[2]、ISILはJP-1001760[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は9,397冊、貸出冊数は3,895冊[4]

一之宮分館

一之宮分館(いちのみやぶんかん)は高山市一之宮町3095番地の飛騨位山文化交流館内に設置されている[54]。分館の面積は91m2[2]、ISILはJP-1001761[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は14,341冊、貸出冊数は9,252冊[4]

久々野分館

久々野分館(くぐのぶんかん)は高山市久々野町久々野1505番地4の久々野公民館内に設置されている[54]。分館の面積は133m2[2]、ISILはJP-1001762[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は14,856冊、貸出冊数は4,652冊[4]

朝日分館

朝日分館(あさひぶんかん)は高山市朝日町万石800番地の燦燦朝日館内に設置されている[54]。分館の面積は54m2[2]、ISILはJP-1001763[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は5,372冊、貸出冊数は4,095冊[4]

高根分館

高根分館(たかねぶんかん)は高山市高根町上ケ洞428番地の高山市高根支所内に設置されている[54]。分館の面積は47m2[2]、ISILはJP-1001764[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は1,682冊、貸出冊数は259冊[4]

国府分館

国府分館のあるこくふ交流センター

国府分館(こくふぶんかん)は高山市国府町広瀬町880番地1のこくふ交流センター内に設置されている[54]。分館の面積は351m2[2]、ISILはJP-1001765[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は27,097冊、貸出冊数は22,496冊[4]

上宝分館

上宝分館(かみたからぶんかん)は高山市上宝町本郷540番地の高山市上宝支所内に設置されている[54]。分館の面積は235m2[2]、ISILはJP-1001766[55]。2014年(平成26年)度の蔵書数は13,046冊、貸出冊数は4,048冊[4]

利用案内

利用実績は人口10万人弱の都市に立地する公共図書館としては上位にある[47]。日本各地の新図書館建設計画において視察対象となることがあり、これまでに市立小諸図書館[57]、南砺市立図書館[53]などの関係者が視察に訪れている。

  • 開館時間:9時30分から21時30分まで
  • 休館日:毎月末日(ただし末日が土・日・祝日の場合は前日)、特別整理期間(11月第4日曜日から7日間)、年末年始
  • 貸出制限:飛騨地方に在住・通勤・通学している者。図書利用カードは本館・分館共通。
  • 貸出可能点数:10点
  • 貸出可能期間:2週間(延長は1回のみ可能)
  • 自動貸出機、無料Wi-Fiあり。
  • 予約、リクエスト可能。

長時間の開館と休館日削減

夜間の高山市図書館「煥章館」

2004年(平成16年)4月の煥章館開館時に開館時間の延長を行った[30]。旧館時代から閉館時間は平日20時、土日19時で比較的遅い方だったが、それを平日1時間半、土日2時間半延長し21時30分としたのである[30]。延長分の来館者数の全日に占める割合は1割で、勤め帰りの男性サラリーマンの来館が多いという[30]。17時以降で見れば、全日の3分の1を占める[30]。夜間の開館に関しては歴史があり、すでに1916年(大正5年)4月17日に夜間開館を開始しており[14]、1959年(昭和34年)9月1日からは火曜日と金曜日に19時から21時までの夜間開館を実施していた[22]

開館時間の延長に加え、休館日の削減を実施した[30]。旧館時代は月曜日、祝日、毎月末日で年間70日ほど休館していたが、毎週の休館日を廃止するなどして20日程度にまで減少させた[30]。これには図書館流通センターへの業務委託が大きく貢献している[30]

住基カード・マイナンバーカードでの貸し出し

煥章館開館と同じ2004年(平成16年)4月に、館内に証明書自動交付機が1台設置された[39]。この時住民基本台帳カード(住基カード)の多目的利用が検討され、同カードの独自利用領域に図書館利用カードの情報を書き込めるようにすることが決定した[39]。高山市では市の広報誌やコミュニティ放送飛騨高山テレ・エフエム)、ケーブルテレビ飛騨高山ケーブルネットワーク)、インターネットなどを駆使して市民への利用を促進し、2008年(平成20年)7月から日本で初めて住基カードによる図書の貸し出しを開始した[39]。同月以降、住基カード取得者は順調に増加し、図書利用カードとして利用する層は30 - 40代と回覧板口コミで知った70代が多くなっている[39]。煥章館には自動貸出機も備え付けてあり、住基カードなら財布からカードを出さずとも財布ごとかざすだけで情報を読み取ることができる[39]

2009年(平成21年)3月からは分館でも住基カードによる貸し出しを開始した[39]。また個人番号カード(マイナンバーカード)制度の開始に伴い、マイナンバーカードを利用した図書の貸し出しも可能となっている[58]

指定管理者制度の導入

2004年(平成16年)の煥章館開館時から高山市図書館では業務大半を図書館流通センターに委託していたが、そもそもこの業務委託は図書館の開館時間および開館日数を旧館時代より大幅に拡張する上で公営では困難であったことに端を発する[5]

2005年(平成17年)10月に指定管理者選定のプロポーザルが行われ、図書館流通センターが選定され、2006年(平成18年)4月から指定管理者による運営が始まった[5]。同社が受注した指定管理の業務は、設備・備品などの維持管理、資料選定以外の図書館業務全般と一部の分館の管理運営、生涯学習ホールの運営管理、近代文学館の資料管理などであった[37]。当初の契約期間は3年間で[37]、2016年(平成28年)現在も契約は継続している[3]

図書館流通センターは高山市の指定管理者募集要項と業務水準書から以下の3点を高山市が図書館に求めていると捉えた[59]。これらはビジネス支援が求められる傾向にある21世紀初頭の日本の図書館界の動向とは異なり、文化や生涯学習の支援を求める文教都市・高山の個性を反映したものである[60]

  1. 21世紀における活力ある市民社会の形成
  2. 上記を達成するための多様で創造的な生涯学習の振興
  3. 上記2点を達成するためのすべての人が参加し等しくサービスを受けられるバリアフリーの図書館作り

以上の3点を踏まえ、8項目からなる『高山市図書館運営方針』が策定された[61]

指定管理者制度による図書館運営のメリットについて受注側は、予算に縛られないため柔軟な制度設計の変更が可能であること、事業の決定権限が館長に集中するため創意工夫や迅速な意思決定が可能であること、人事異動や契約外の業務の遂行を避けられるため図書館の専門性・独立性を保てることを主張している[62]。また市直営時代よりも多くの職員を地域住民から雇用し、住民税を納税していることから、指定管理者制度の導入は企業誘致と同様の効果があるともしている[3]行政において直接的に市民生活に貢献する都市基盤整備部門に含まれない図書館は軽視されがちで、予算削減や職員の非正規化・雇い止めの進む公営より指定管理者の方が良く、もはや指定管理者でなければ図書館を運営できないという意見もある[3]

一般には指定管理者制度の導入に特徴付けられる高山市図書館であるが、図書館と教育委員会の連携という側面から評価する声もある[63]

主な取り組み

図書館の運営はおおむね市民の評価を得ている[35]。(利用者満足度は7割に達する[3]。)戦前の1930年(昭和5年)2月11日には文部省から成績優良として選奨されており、かねてより評価されてきた図書館である[18]。図書館で行われる事業は主に読書推進事業であり、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会などを通して市民の読書欲を高めようとしている[64]。特に児童の読書推進に力を入れており、職員やボランティアによるおはなし会を中心に、外国語絵本展などを開催してきた[64]。2007年(平成19年)度の延参加者数は本館が4,851人(うち児童向けの事業に3,594人)、分館が合計で592人(うち児童向け420人)であった[65]。2013年(平成25年)には「平成25年度子どもの読書活動優秀実践校・図書館・団体」として文部科学大臣表彰を受けている[40]

煥章館セミナー

煥章館で開催する成人向けの中核事業であり、古典講読を中心とした講座を展開する[6]。読書推進と生涯学習を兼ね、古典学習を通した伝統文化の再評価をも意図している[65]。煥章館セミナー自体は指定管理者による運営以降のものであるが、その源流は市直営時代の1996年(平成8年)に始まった『源氏物語』と漢詩を読む講座に求められる[66]。またセミナーの受講者がその内容に触発され、より深めるサークルを設立・運営するという動きが見られるのが高山市の特徴である[67]

これまでに扱われたのは『おくのほそ道』や『伊勢物語』といった日本文学トーマス・ハーディ『アリシアの日記』などの「原書で読む英文学」シリーズ、「飛騨史を見直す」などの郷土学習などであるが、歴史や当時の社会との関係を考えながら聴くCDコンサートも開催している[68]。中高年層を中心に評価が高く、2007年(平成19年)には延べ966人が参加した[65]

煥章館セミナーの講座はあらかじめ年次計画を高山市と図書館流通センターが協議して基本計画を決めておくが、参加者数が低迷した場合などには柔軟に変更して利用者目線のサービス提供に努めている[69]

調べ学習講習会

2007年(平成19年)に市内の小中学校の教諭司書教諭学校司書向けに「調べたいという子供の気持ちを大事にする」というテーマで開催し、2008年(平成20年)には小学校教員と小学生を招いて夏休みに生涯学習ホールで開催した[70]。同年はワークショップ形式を取り、グループ名をまず決めてその関連語を集め、百科事典や図書館の蔵書で調査し、カードに書き出すという活動を実施し、最後に他の調べ方(人に聞くなど)を教授した[71]

調べ学習講習会は夏休みの宿題として課される「調べる課題」への支援という側面を持つが、子供たちに図書館を活用したもらうことと、高山市図書館と学校図書館をつなぐことを主眼としている[72]。また高山市教育委員会の主催、図書館流通センターの共催で「高山市図書館を使った調べる学習コンクール」を行い、2016年(平成28年)に7回目を迎えている[73]

ぬいぐるみのお泊り会

2011年(平成23年)に初めて開催した企画で、昼間に開催されるおはなし会の際に参加者が自分のぬいぐるみを持参し、会終了後にぬいぐるみだけ図書館に「宿泊」するというものである[74]。持ち主が迎えに来た時に、ぬいぐるみが夜の図書館を探検する様子をまとめたアルバムがもらえる[74]。またその時、宿泊中のぬいぐるみの様子を職員から聞くことができ、ぬいぐるみから「おすすめの絵本」の紹介も受けられる[74]

この企画はアメリカ合衆国の図書館が発祥で、高山市図書館以外でも実施している日本の図書館もある[74]

特集展示

煥章館2階に特集展示コーナーがあり、各種展示を行っている[75]。2014年(平成26年)6月には「大人のための学び直しガイド」と称して図書館所蔵のお勧めの学習参考書の展示を行った[75]

『氷菓』聖地巡礼

米澤穂信原作のテレビアニメ氷菓』は高山市を舞台とした作品であり、作中では岐阜県立斐太高等学校とその周辺、高山の街並み、商店街などが忠実に描かれている[76]。高山市図書館「煥章館」は、作中第18話で3年前の悲劇を追って奉太郎と千反田が訪れる「神山市図書館」のモデルとなっており[77]、『氷菓』ファンは一般的な観光客とは違った視線から図書館を写真に収めていく[78]。また2014年(平成26年)4月26日から5月6日まで、煥章館開館10周年記念事業の一環で高山「氷菓」応援委員会の主催による「奉太郎バースデーイベント」が行われ、奉太郎へのメッセージか煥章館の感想を書くと、上述の図書館シーンが描かれたポストカードがもらえる企画が煥章館で開かれた[79][80]

高山市には2012年(平成24年)4月の放送開始直後から、いわゆる聖地巡礼に訪れる人が現れ始め、高山市商工観光部観光課もこれに呼応して2013年(平成25年)2月に「聖地巡礼マップ」を作成、十六銀行は『氷菓』の巡礼者数を15万人、経済効果を21億円と推計した[81]

周辺

高山市図書館「煥章館」の周辺は高山市の文教地区であり、飛騨高山まちの博物館城山公園が近くにある[31]。また、伝統的建造物群保存地区三町金森氏統治時代の武家屋敷区割り、京都を模した東山八刹などに囲まれている[31]。これらの街並みは観光資源でもあり、高山市図書館では観光ガイドブックを揃え観光客の便宜を図っている[48]

JR高山本線高山駅から徒歩約18分である[45][51]。図書館に隣接して高山市営空町駐車場があり、図書館利用者・文学館入館者は2時間無料で駐車できる[33][51]

脚注

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注釈
  1. ^ 高山市図書館の設置及び管理に関する条例(平成15年12月19日高山市条例第17号)によれば、高山市が設置する図書館の名称は、高山市図書館「かん章館」であり(第2条)、その中に高山市図書館・高山市近代文学館・高山市生涯学習ホールが置かれている(第3条)。すなわち、高山市近代文学館・高山市生涯学習ホールも「図書館」としての位置付けである。なお条例中では「かん章館」と煥の字に常にルビが振られている。
  2. ^ 『高山市史下巻』における記述[12]。『高山市史第三巻』では1914年(大正3年)の大野郡公会堂への移転時に大野郡教育会に移管したとある[10]
  3. ^ 『高山市史第三巻』による記述[10]。長年高山市職員を務め、高山市図書館館長を歴任した大下直弘は1924年(大正13年)4月に高山町に移管し、高山町図書館に改称した、と記述している[15]
  4. ^ 『高山市史第一巻』に1943年(昭和18年)4月1日に教育会から市へ移管した、とあり[16]、『高山市史下巻』でも高山町教育会が昭和初期に図書館の業務を行っていた旨の記述がある[17]
  5. ^ 『高山市史』各巻に高山市図書館への改名時期の記載はない。なお高山市の市制施行は1936年(昭和11年)1月1日である。
  6. ^ 『高山市史第一巻』における記述[16]。大下直弘は1924年(大正13年)4月に高山町に移管し、以後公立図書館としての歴史を歩んだと記述している[15]
  7. ^ 高山市生涯学習課からの出向で、館長と図書館司書の2人であった[30]
  8. ^ 実際の煥章学校は木造であった[31]
  9. ^ 写真がモノクロで当時の色が不明であったため、外観の似ている奈良女子高等師範学校を参考に白と淡緑色が選ばれた[43][46]
  10. ^ 公民館図書室は設置されていた[3]
出典
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参考文献

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関連項目

外部リンク