付加体

付加体形成の模式図。海洋プレート(緑色)と大陸プレート(ピンク色)に挟まれた 楔形の部分が付加体。海洋プレートは左側の海嶺で作られ、移動しながら表面に様々な岩石を堆積させて、海溝(trench)で大陸プレートの下に沈みこんでゆく。海洋プレート上部の堆積物の一部はプレートから剥ぎ取られ大陸側に付加する。また海洋プレートと一緒に大陸下に潜り込んだ堆積物は、大陸プレートとの摩擦で海洋プレートから分離し、大陸プレートの下に底付けされる。

付加体(ふかたい、accretionary prism)とは、右図に示すように海洋プレート海溝で大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレートの上の堆積物がはぎ取られ、陸側に付加したもの。現在のところ多くの地質学者が「日本列島の多くの部分はこの付加体からなる。」という見方をしている。

概要

付加体という概念は、日本の複雑な地質構造についてプレートテクトニクスの考え方に基づいて詳細に検討された結果生み出されたものである[1]。この概念によって日本列島を形成する海洋起源の堆積岩変成岩について、系統的な解説ができるようになった。

プレートテクトニクスでは、海洋プレートは上部マントルの上昇部である海嶺で作られ、海洋底として徐々に海嶺からはなれて行き、最後には海溝で沈み込んでゆくと説明されている。この間、玄武岩質の海洋プレートの上に様々な岩石が堆積してゆく。まず海嶺近辺の所々で地下からの熱水の湧き出しによる金属鉱床が形成される。大洋では放散虫の死骸を含んだチャートや、他の生物の死骸を含んだ石灰岩が徐々に堆積してゆく。海底火山の玄武岩や、その周辺に発達したサンゴ礁からできた石灰岩も、海洋プレートの上に乗ったまま運ばれる。海溝に近づくと大陸から運ばれた土砂や岩石によって、砂岩礫岩も堆積する。海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、これらの堆積物が海洋プレートから離れて大陸プレートに付加したものを付加体と呼ぶ[2]。海洋底表層のチャート類や大きなサンゴ礁などは、海溝で海洋プレートから剥ぎ取られて陸側に付加する。海溝では次々に新しい付加体が到着するため、古い付加体は大陸側へ押出される。この結果、付加体内部は多くの逆断層を有し、新しい堆積物が古い堆積物の下に潜り込んでいるため地層累乗の法則に反する構造を取ることもある。また海洋プレートと共に地下に沈んだ堆積物の一部は、大陸プレートとの摩擦で海洋プレートから離れ、大陸プレートの下に底付けされる。この場合、堆積岩は比較的低い温度と高い圧力を受け、特徴的な変成岩となる。日本列島に幅広く分布する広域変性帯はこのようにして形成された。

日本列島における付加体の状況

日本列島の周辺では、約3億年前から断続的に海洋プレートが沈み込んでおり、各年代において特徴的な地質構造を有し、日本列島の骨格を形成している。海洋プレートの沈み込みは現在でも継続しており、東海地震南海地震震源とされる南海トラフにおいて、フィリピン海プレートが日本列島の下に潜り込んでおり、四国沖では新たな付加体が形成され続けている。上記のように大陸側(日本海側)のほうが古い地層である。なお下記に示す年代は付加体として大陸に固定された年代であって、実際に海底で堆積した年代は 更に古い。

古生代石炭紀から中生代三畳紀

分布は北九州、中国地方、上越地区。石灰岩でできた巨大な鍾乳洞秋芳洞がある秋吉台は、約2億5千万年前に付加体となった。当時アジア大陸に沈み込んでいた海洋プレートは、ジュラ紀末に消滅した(全て沈んでしまった)ものでイザナギプレートと呼ばれている。

中生代ジュラ紀

この時代の付加体は九州中部、四国北部と中部、南部を除く近畿地方、中部地方と関東地方の大部分に分布。全部をまとめてジュラ紀付加体と総称されることがある。中央構造線はジュラ紀付加体の中にある。中央構造線周辺には広域変性作用を受けた領家変性帯三波川変性帯が存在するが、何れも大陸底に底付けされた付加体が、その後の地殻変動で地表に現れたものと考えられている。ジュラ紀付加体でのトピックは、1990年代に地球史上最大の大量絶滅であるP-T境界を記録した地層が岐阜県の鵜沼にあるチャート層で発見された事[3]。大量絶滅の前後を含む当時の海洋の継続的なデータが得られた。また愛媛県別子銅山は、海底に析出した熱水鉱床が海溝で沈んだ後、大陸に底付けされ変成作用を受けて形成された鉱山と推定されている。[4]

中生代白亜紀から新生代古第三紀

この時代につくられた付加体は、九州南部、四国南部、紀伊半島南部、中部地方の南部の一部に分布。代表的なものに堆積岩の地層である四万十帯がある。この頃は太平洋プレートが直接日本列島の下に沈みこんでいたとされる。

新生代新第三紀以後

前代(古第三紀)に生まれたフィリピン海プレートが、南海トラフに沈み始めた。これは現在も継続しており、四国沖には今も付加体が形成され続けている。

付加体から得られる情報

脚注

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  1. ^ 『地球史がよくわかる本』 25頁。
  2. ^ 『地球史がよくわかる本』 27頁。
  3. ^ 『地球史がよくわかる本』 275頁。
  4. ^ 『地球鉱物資源入門』 79頁。

関連項目

参考文献

外部リンク

  • 大鹿村中央構造線博物館、付加体ってなに?[1]